シロウオ
先日も「明後日京都を離れます。」と常連の女子大学生のお客様が挨拶してくれました。
おしとやかな感じでカワイイ女の子でした。
東京で就職だそうです。
「また来ます。」なんて言ってくれました。うれしいですね。
ホント、私にとっては寂しい話です...。でも頑張ってくださいね!
そのお客様と話しているうちに、出身地の話になり、彼女が愛媛の出身だと言うことが分かりました。
愛媛...いいところですね...。
私は西日本の各地へはほとんど行ったことがあります。
もう10年くらい前だと思いますが、愛媛にも小旅行に行きました。
ちょうど今頃の季節でした。
当時はサラリーマンで、広島に住んでいました。
広島市内の自宅を出て、福山市との中間くらいにあるにある竹原市の港からカーフェリーに乗り、愛媛北の端の波方という土地に渡りそこから四国の西側海岸線をひたすら南下しました。
途中、松山市を経由し、四国の西の果て佐田岬を進み海の向かいの九州の大分県を見ました。
昨今は関サバ・関アジが有名ブランドになっていますが、あの辺りの海がそうなんですね。
そして佐田岬を後にし、八幡浜、蒲鉾で有名な宇和島を経由し、津島市に入りました。
私とマッチャンの旅は常にその時の気分任せ。前もって計画して行く先を決めていません。
んでもって、その津島市に入ったところ、ガイドブックを見れば『シロウオの踊り食い』が名物とあるではないですか!
それは滅多にないチャンス!シロウオは河口から川を溯上するので、川沿いの店を探してやっとのことで『シロウオの踊り食い』を体験します。
生きたままの5〜6cmくらいの半透明な魚が20匹くらいだったかな?
三杯酢の入った片手で持てる器の中で窮屈そうに泳いでいます。
右手に箸を持っているものの、器に口をあてて三杯酢と共に吸い込みます。
味はと言うと、ほとんど三杯酢の味です。食感は簡単、噛むと『プチッ』とちぎれてしまうだけです。
正直気持ちのよいものではなかったですね。
『かき揚げ(天ぷら)』なんかもあり、きっとその方が美味しかったと思います。
マッチャンはと言えば...目をつぶってシロウオを箸で一つづつ掴んでは噛まずに飲み込んでいました。はっきり言って、泣きそうな顔です。いや泣いていました。
私が「どうしたの?」と聞くと、マッチャンは「かわいそうで噛めない...。」と答えます。
私はそれを聞いて更に言います。「ゆっくり胃で溶かされるより、噛んで絶命したほうが奴等の苦しみは少ないぞ。」
するとマッチャンは更に泣きそうな顔で、「そうか...そうやね、そうやね...。」と繰り返していました。
食べるマッチャンにもシロウオにも気の毒な話です。
まぁ、シロウオの不幸に比べればマッチャンの不幸は大したこと無いと思いますが...。
結局、残りは私が食べたのですが、やっぱり美味しいとは思えなかったですね。
毎年この季節には決まって、どこかの河口の町で『名物のシロウオ漁が始まりました』といったニュースが流れます。
私にとってそのニュースは『マッチャンの悲しい顔』を連想させるものとなっています。