BROGLD MASTER 伊勢屋の非大人的アレコレ

おそらく、読んだ人の役には立たない内容ばかりです。

非情の男(最終話)

まったく...。


花火会場からの脱出は大変なもんだ...。


会場は浜大津


国道161号線のすぐそばの大津港。


電車といえば、京阪京津線(京都三条方面)と


京阪石山坂本線(坂本・石山寺方面)。


JR大津駅はちょっと遠い。




実は大阪に住んでいる頃のことなので、車を石山寺の駐車場に停めていた。
(寺の駐車場に無料で)


だから、なんとか京阪石山坂本線に乗車しなければならない。



しかし浜大津で電車に乗るのはまず無理だろう。


だから一つ東(目的方向)の『島ノ関』駅に徒歩で向かう。





ところが、会場から出るのも一苦労...。


人が多過ぎて、歩いていてもノロノロ進むだけ。


その上、国道161号線の信号が赤になる度、流れが止まるので、


なお更遅い。


150m程の歩道を15分くらいかけて進んだ。


1分で10m、これって結構疲れる...。

しかし長い帰路はまだ始まったばかりなのであった。




さすがに、どのくらい時間がかかったかは記憶に無いが、


とにかく600mくらいの距離をとんでもなくストレスを


感じながら進み、



やっと『島ノ関』駅に到着!



と言いたいところだが、あたりまえのこと...


同じようにそこから電車に乗る人は超大勢!


簡単には駅の切符も買えない...。




駅の入り口・切符売り場は歩いてきた道から行くには、


遮断機越え、つまり線路の向こうに行かなくてはならない。



一度に大勢の人が遮断機を渡る。


電車が来るため、遮断機が下がる。


でも人が多過ぎて、早く渡ろうとしても動けない。


結果、遮断機が下りても線路から出られず、


パニックになっている人も多い。

まったく大変な事態だ...。




かく言う私も『遮断機難民』になり、線路上に取り残されてしまった。


しかし、駅員もそこは心得たもの...。


駅員と電車の運転手と連絡を取り合い、上手くコントロール


しているので、心配はしていなかった。



つまり、遮断機が下りようとしている時、


ちょっと無理してでも前に進んだほうが得策なのである。


真面目な人よ...


ゴメンネ...。




さてさて、やっと切符を買い改札を通過したが、


やっぱりなかなか進まない、ホームまで行けない...。



と言うのも...


当然のことながら、一つ前の『浜大津』駅で、


目一杯乗客が乗っている電車が到着する訳である。


だから、この駅で乗車できる人の数は、



ちょっとづつ


な訳だ...


悲しいけど、現実だ...。





そしてもう一つ難関があった。


『島ノ関』駅の改札は一箇所で、


石山から坂本方面行きのホーム横に作られている。


つまり、石山方面に行くためには、


駅敷地内の線路を再度渡る必要がある。


もちろん、そこにも遮断機がある。





ようやくその線路上を、


まっちゃんと腕組みながら歩いていた。


あともう少しでホームにたどり着く...。


長かったな〜っ。


大変だったな〜っ。


と思いながら歩いていたら、



「カンカンカンカンッ!」

と警報が鳴り、やがて遮断機が下りてきた。


だが、先程と同じ、


人が前に詰まっているので、


私たちの前数人が遮断機にさえぎられた。







と...






その時...






事件は起こった...。









まっちゃんと私の後ろには、


オッサンが一人だけいた。





スラックスにサラリーマンシャツ、


ノーネクタイで足元は草履。


体型は『ズングリ』、典型的な『白ポチャ』、


少な目の髪を8:2分け、上半分だけ太い黒縁の眼鏡。



絵にかいたようなキャラクター!!!!


娘がいたら、絶対に一緒にお出かけしてもらえないタイプ。





その...オッサン...


何があったのか...


急にパニックに陥り...




「の、乗せてくれーっ!」


と叫びながら、


まっちゃんと私(腕組んでた状態)の間に、


うちわを持った右手を挙げた状態で、


突っ込んできてぶつかって来た!!!!




いきなりの事にビックリして、


「キャーッ!」


と叫ぶまっちゃん...。




その刹那!


思考が脳に達していない、


極反射的な私...。




そのオッサンを睨み付け、


「何しとんじゃこるぁーっ!」


と一括!




するとそのオッサン...


物凄く唖然とした表情になり...


ゆっくり...一歩二歩と後ずさり...


そして、まるでギャグ漫画のように、



足がもつれて後ろ向けにコケた...。


何より驚いたのは...


コケたその時、



草履片方が宙を舞い、眼鏡がはずれたことだ!


いくら偶然とは言え、


見事なズッコケぶりだった!!!!


まぁ幸いなことに、頭は打ってなかったので、


すぐに身体を横に転じていたことを覚えている。




しかしその時、


誰かの声が私の耳に飛び込んできた。





「酷いことするね〜っ。」



ええ〜っ!!!!




俺何もしてへんやんかーっ!


大声上げたけど、


手は一切出してへんし、


第一、被害者はこっちやんか!


向こうがいきなりぶつかって来たんやで!


第一、腕組んでるのに、


手が出せる訳無いでしょが!





そうです。


その変なオッサンの一人芝居のおかげで、


私は...




『非情な男』



として冷たい視線を浴びせられたのでした...。






最後にまっちゃんが一言。


「ホンとに何もしてない?」

「...。」


「ガクッ!」とズッコケながら私が答える...。


「あんたと腕組んでたやろ...。」





まっちゃん、かんべんしてよ〜っ...。